今回は性被害のトラウマを持つ性依存症当事者にとって、回復の過程で避けては通れない苦しさについて、少し綴ってみようと思います。
『Don't Call It Love / Patrick Carnes, Ph. D』 によると、性依存症の男女比は圧倒的に男性が多く、女性は少ないです。
かといって女性の性依存症当事者は全くいないかといえば、そんなことは全くありません。むしろ見過ごされがちであるということは、以前別の記事の中で紹介させていただきました。
女性の性依存症当事者、そして一部の男性性依存症当事者が抱えている苦しみの大きな要因をお話しします。
性被害のトラウマ
性依存症スクリーニングテストを提供しているIITAPによると、性被害の経験がある人は、そうでない人と比較して性依存症に陥るリスクが格段に上がると言われています。
仕組みは異なりますが、タバコを吸っている人は、非喫煙者に比べて肺がんのリスクが跳ね上がるのをイメージしていただくとわかりやすいと思います。
男性・女性問わず、性被害がきっかけとなって性依存症になった当事者の方にとって、安心して性依存症であることを打ち明け、回復を目指すことができる場所というのが、現状ではとても限られていると言わざるを得ません。
性加害者と性被害者は、同じコミュニティーで回復を目指せるのか
性依存症の回復において非常に異質といえるのが、問題行動が性犯罪などの性的加害行為である当事者と、性被害によって性的行動に依存するに至った被害者が、同じコミュニティーで回復を目指す構図になっていることです。
グループによっては女性クローズドのグループを作っていたりもしますが、男性の性被害者のためのグループの存在は私自身は知りません。また、性被害者クローズド、性加害者クローズドなどの細分化ができるほどの余裕は自助グループにはざんねんながらありません。
現状で抱えているの問題行動という一側面を切り取れば、同じ性依存症なのかもしれませんが、その根本に性被害のトラウマがある当事者と、性的加害行為を問題行動としている当事者が同じ場所で分かち合いをしなければならないのです。
これは性被害から性依存症に陥った当事者にとって、回復の大きな障壁になっていると私は考えています。
私は痴漢被害の経験があります。どこの誰を恨めばいいのかもわからないし、相手も痴漢行為に依存していたのかもしれないと心で思うことはできます。
しかし、直接的ではないにせよ、被害に遭って苦しかった、誰も助けてもらえず辛かったトラウマを、加害者と同じフィールドで分かち合い、回復を志すことは、性被害の当事者にとって心の荷が重すぎるのではないか?と疑問に思ったのです。
だからこそ、男女や加害者・被害者の隔てなく、性依存症に関して、誰もが安心して相談できる、専門家による受け皿が必要であると考えています。
それを実現できるのが、CSAT (Certified Sexual Addiction Therapist:公認性依存症セラピスト)資格だと私は考えています。
性の問題に携わる心理職や医療従事者、精神科医の方々で、CSAT取得に関心を持っていただける方がいて、少しでも早くCSATが性依存症の悩みに寄り添える社会にしていけたらいいなと思っています。
性的な苦しみを抱える人たちが、孤立しない世の中に近づくように。私自身に出来ることはまだまだ微力ですが、少しずつ進んでいきます。
(noteより転載、一部加筆修正しています。)
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