性依存症当事者の「裏切り」がもたらすトラウマと、パートナーに必要な心のケアについて

更新日:2021年6月9日

以前から書こうと思っていた、「性依存症の問題行動による裏切り」に直面したパートナーが、共依存に陥らずに、心と関係修復のために真っ先に必要になる対応について解説していきたいと思います。

性依存症当事者の「裏切り」に直面する苦しみ


パートナーにとって、性依存症当事者の不倫や浮気、性犯罪で逮捕されるなどの「裏切り」は、何気ない日常生活を送っている最中に頭を殴られたような、衝撃的な出来事であると言えます。性依存症当事者は、問題行動を自分だけの秘密にして極力周りに悟られないように必死に守っていることから、それが明るみになった時にパートナーは様々な感情に見舞われることになります。


中でも強くパートナーを苦しめるのは、「どうして私は裏切られたのだろう」という怒りです。この怒りは、信用している人に裏切られたのですから、至極当然の感情です。パートナーはいかなる状況であれ、怒りを感じる自分を責める必要は全くありません。


しかし、この「怒り」という感情の扱い方を間違えてしまうと、パートナーがさらに傷ついてしまうことにもなりかねませんし、関係修復が困難になっていく要因にもなっていきます。「裏切られたことに対する怒り」に対して、適切に対処していくことが重要です。


性依存症当事者を恥に晒すようなことは逆効果である


一般的に問題行動が発覚した時、「怒りに任せて問題行動を起こした本人を罵倒する」ことや、「同じ苦しみを味わってもらおうと仕返しに浮気をする」という行動がみられたりしますが、こうした「問題行動を起こした当事者に対して恥をかかせてやる」という報復を目的とした行動は、回復のプロセスにおいては逆効果であると言われています。

もしパートナー側の行動が、仕返ししてやるといった方向に傾いてきていると感じる場合は、要注意です。


こうした怒りを健全に対処するには、性依存症当事者から離れたところで、怒りの感情を吐き出すことが必要になってきます。個人カウンセリングや夫婦カウンセリングなどを活用したり、口外しないと約束できる、信頼できる人に打ち明けてみたりするのもいいでしょう。また、S-Anonという性依存症当事者のパートナーのための自助グループも存在しています。

ここの性依存の個人ミーティングで、お話を伺うこともできます。

重要なのは、「怒りを自分の中にため込まず、問題行動を起こした当事者にぶつけるのではなく、信頼できる第三者の手を借りる」ということです。


性依存症の問題はなかなか誰かに相談するのが難しいと思います。

ですが、夫婦間の秘密として抱えていると、互いに傷つけ合うことにつながりかねません。

個人ミーティングでお話を伺うこともできます。

怒りを一人で抱え込まず、話すことで吐き出してみてください。


心に負ったトラウマに、きちんと目を向ける


パートナーは問題行動という裏切りにより、深刻なトラウマを抱えたことになります。しかしながら、多くの場合、問題行動そのものに対しての対応に追われるあまり、心に負ったトラウマが置き去りになってしまっています。これは多くの共依存当事者に共通する問題ですが、「相手の行動に囚われてあれこれ行動することで、自分の中にある心の問題を見ないようにしてしまう」のです。性的な問題行動が不貞行為の場合、多くのパートナーが不貞の証拠探しのためにスマートフォンを盗み見たり、相手の財布の中のレシートをチェックして怪しい買い物がないかチェックしたりします。これは、相手の行動に囚われている状態です。

パートナーは、自分が深刻なトラウマを抱えたことを自覚し、心の傷にきちんと目を向けて、「自分は裏切りによってトラウマを植え付けられた」と認めることで、関係修復がすすんでいきます。


まずは「交渉不可の境界線」を明確に引く


実は問題を起こした当事者も、裏切られたパートナーも、視点は違いますが、同じ懸念を抱えているのです。

それは、「また信用してもらえるだろうか?だとしたら、どうすればいいんだろうか?」というものです。問題行動を起こした側はこれだけのことをしでかしているわけですから、また信用してもらえるかどうか途方に暮れていることでしょう。また、パートナーも、証拠を探すために躍起になって行動やプライバシーを侵害するような行動をとってしまったことへの後悔の念を少なからず抱えています。さらに言えば、問題行動を起こされたということで、自分にはもう関心がないのかもしれないといった不安も生じてくると思います。


こうした懸念と、これ以上の干渉を防ぐために必要なのが、「交渉不可の境界線」をきっちりとひいておくことです。これは先延ばしにせず、問題行動が発覚したらすぐに取り掛かりましょう。


交渉不可の境界線の例

  • 不貞の場合は、相手とのつながりを断ち、不貞に気づいていることを相手に知らせる

  • 不貞相手を二度と連絡を取らない

  • 問題行動を起こした当事者のスマホにフィルタリングソフト・GPSなどを導入する

  • 夫婦カウンセリングや個人カウンセリング、自助グループなどを活用することで、関係修復の努力をすることを約束する

  • 問題行動に対する怒りや心の辛さがある間は、夫婦であっても寝室を分ける

  • 問題行動を含めたあらゆることを、正直にカウンセリングや自助グループで打ち明ける

  • 問題行動を起こした当事者は、性依存症の治療に専念する

まずはこの境界線をカップル間で共有し、守ることを約束しましょう。

また、これを決めたからと言って、必ず関係を修復しなければならないわけではないということも念頭においてください。

関係を修復するかどうかは、一旦保留にして、心の問題に目を向けようというのがこの境界線の目的です。


この境界線を決める際に、次の文章を二人で読み合わせてから進めると、これから決めることは回復を目的とした行動であることが明確になります。

あなた方二人には、苦痛を癒し、関係を修復する力が備わっています。
この時間を使って、二人の関係のために必要なものを用意しましょう。
まず初めに、お互いの問題や、願望や思っていることはいったん横に置きましょう。
互いに言い争うのではなく、裏切りの行為を反省して、二人の関係を守るために協力しましょう。
二人の関係性を修復すると約束することは、努力と犠牲を伴います。
困難な行動や約束をすることになるかもしれません。
どうか、お互いに思いやりと共感を持つことを約束してみてください。
お互いに相手の立場に立って、考えるよう努めてください。
また、お互いに敬意をもって接し、思いやりとやさしさをもって相手と話すことを約束してください。
これは、相手の言っていることすべてに同意しなければならないという意味ではありません。
尊敬の念を持ったコミュニケーションと思いやりをもってお互いを尊重することを通じて、裏切りという重要な問題について妥協点を見出す努力をするということです。
これが、二人の関係を修復するために、双方と、愛情を尊重するための方法なのです。

(Carnes, S. Courageous LOVE A COUPLES GUIDE TO CONCUERING BETRAYAL. pp.19より翻訳し引用)


「性的な裏切り」に直面した際に、カップルが真っ先に取るべき行動を解説させていただきました。

性的な問題行動に限定したものではありますが、別な依存症問題に置き換えて考えることもできると思います。より多くの人に参考になれば幸いです。


参考資料:

Courageous LOVE A COUPLES GUIDE TO CONCUERING BETRAYAL / Dr. Stefanie Carnes

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