今回は、女性の性依存の症状を引き起こす要因について、少し解説してみたいと思います。
私は女性の性依存症当事者として、このブログで発信を続けているのですが
「性依存の症状」というものがあったとしても、それがイコール性依存症(性嗜好障害)ですよというわけでもなく、様々な原因や、要因が関係しています。
1.愛着障害(母子関係・父子関係での愛着形成不足)
愛着障害(attatchment disorder)とは、幼少期に養育者に「甘える」「養育者を信頼する」などといった愛着形成をうまく行えなかったことによって生じる、様々な生きづらさをまとめた総称といえます。この「愛着」というものは、「親にお世話してもらう」という養育行為だけでなく、「親に安心して甘えられる環境にある」「養育者を無条件で信頼できる(無条件の愛を受け取る)」といった、心の安定に必要な「他者に安心して心を委ねることができる経験」のことを指します。
この愛着形成がうまくいかないと、「甘える」ことや「無条件に受け入れられているという自尊心」がうまく育っていかず、他人に頼ったり、人を頼ったり、信用したりする能力がうまく身につかなくなってしまい、発達していくにつれて様々な困難として当事者を悩ませることになってきます。
愛着障害を持つ性依存当事者の場合、「甘えたい」という欲求が満たされないまま大人になってしまっています。一方で、「人を信用できない」という不信感も同時に抱えてしまっているため、「人間関係をうまく構築できないけれど、心が苦しいから誰かに甘えたい」という思考が形成されていき、それをお手軽に満たせる手段として、援助交際やマッチングアプリ、出会い系サイトや女性用風俗、ホストなどの利用によって、「人間関係の構築をすっ飛ばして、異性に甘える」という経験にハマっていってしまう事態を引き起こしてしまいます。
中には、「母子家庭で父親に甘える経験ができなかったから、年の離れた男性との性的な交流でたくさんあまえさせてもらうことで、心が安定している」というケースも散見しています。成人男性と未成年女子の不適切な性的関係が問題になる背景には、こうした心の問題も大きくかかわっているのです。
これが一時の遊びで終わるのであれば問題ありませんが、常態化して生活に支障をきたしてしまうようになると、性依存症と呼ばざるを得ない状態におちいってきます。
2.ADHDの衝動性による突発的な性行動
私自身がADHD当事者ですが、ADHDの強い衝動性により、思い付きで突飛な行動をとってしまうということが、性行動のきっかけになっているケースもあります。
私自身の場合、性に関する強い関心があった中で痴漢被害に遭い、恐怖を感じつつも「これが私が女性として認識されている証拠だ」と考え、「それなら、こんな私でも性的な価値があるんじゃないか」と思い立ったその日には、個人のアダルトサイトを探し当てて、管理人さんとメールのやり取りを始めていました。 仮に私が健常者であれば、衝動性に突き動かされて、ここまで突飛な行動をとることはなかったのではないか、と振り返ってみて思います。
また、結婚後落ち着いていた不特定多数の方との性行為が再発した際も、「話し相手がいなくてつらくて性的な欲求も満たしたいなら、アカウントを作ってしまえ」と、Twitterで性的なアカウントを即座に作ったことから端を発しています。
ADHDの衝動性は、依存症の「最初の一歩」のきっかけになったり、再発のきっかけになりやすいと推測できます。そのため、性依存を自覚しているADHD当事者は、自分の特性をよく理解して、「最初の一歩をいかに回避するか」を自分なりに対策を立てておくことが重要ではないでしょうか。
また同じ発達障害のASDでも、性依存当事者は存在しています。
ASD特有のこだわりの強さが依存に強く影響しているというケースもあります。
3.不安障害による強い不安からの逃避行動としての性行動
うつや双極性障害、BPD(境界性パーソナリティー障害)など、不安症状が強い当事者の場合、自分の中に抱えている強い不安からの逃避手段として、性依存に至るケースも多いです。心の中にある不安から目をそらすために、何時間も自慰行為にふけったり、不安を忘れるために人と会って話をして、セックスをすることで一時的に心の中にある不安から視線を逸らすことができるといった形で、心の不安に対する「自己治療」としての性行動がこれにあたります。辛くて苦しくて、誰かといないと不安でたまらなくて、相手を探して、セックスをする代わりに心の不安の話を聞いてもらったりする場合もあります。
性行動の頻度がさほど多くない場合は、セックスや自慰への執着は少なく、むしろ「一緒にいてもらうための対価」として性を利用するような側面の方が大きいです。恋愛依存症でセックスはさほど好きではないけれど、相手のためにセックスには応じているという方もこのパターンが多いです。
しかしこれも、性行動の頻度が増えていくにつれて、「セックスしている間は嫌なことは全部忘れられるから、セックスは私の精神安定剤」というような認識に至り、どんどん性行動にのめりこんでいってしまうと、生活に支障をきたし、性依存症と呼べる状態になっていきます。
4.性被害のトラウマの克服を目的とした性行動
何らかの性被害の経験がある当事者の場合、トラウマから極端な異性嫌悪に至るパターンは想像しやすいですが、逆に「性被害を克服するために性体験で上書きしてしまう」という行動に走るパターンもあります。これは性被害のトラウマを持った当事者が、その後多くの性行動を経験することで、「私はこれだけ性にまみれてきたんだから、あんな出来事たいしたことなかったんだ」と、トラウマを矮小化させて心を守ろうとする行動です。
実際には、性被害によるトラウマは矮小化したとしても、抑圧しているだけで、傷ついた自分はずっと心の中に存在し続けます。そのため、いくら性行動で上塗りをしても、心の傷をきちんと受け止めて、恐怖を認めてあげない限り、トラウマによる様々な影響に苦しめられることになります。
自身の経験を「大した事ない」と思い込まず、必要に応じてトラウマ治療などを受けることで、性行動による「自己価値を貶める行為」から脱却できるのではないかなと思います。
いかがでしょうか。
もちろんこれ以外にも要因はあるとおもいますので、また続きを書けたらと思っています。
女性が性依存を自覚し、自分にはこんな心の問題があるかもしれないと思ってもらえて、回復したいと前を向いてもらえるきっかけになればうれしく思います。
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