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タブーにしない、性犯罪のこと。

更新日:2021年6月9日

先日、性被害者の方々とお話しさせていただく機会に恵まれ、その際に「性被害者に対して加害者のことを話すのは配慮が足りない」とご指摘を受けました。これについては、私の配慮が欠如しておりましたことを、心から謝罪させていただきます。申し訳ありませんでした。


私がお伝えしたかった事。それは

「加害者への厳罰化と社会的地位の剥奪は、性犯罪の抑止力にはならない」

ということです。

アダルトコンテンツの刷り込みと背徳感が、性犯罪を引き起こす


痴漢や強制わいせつ、盗撮、覗き、露出など、あらゆる性犯罪が、必ずしも「性依存症である」と断定するのは早計すぎると思います。ですが、こうした性犯罪は「やってはいけないもの」であるという認識をもっていない人はほとんどいないと思います。それではなぜ、やってしまうのか。その鍵になるのは、「アダルトコンテンツによる刷り込み」と、「背徳感」にあります。


路上に落ちている性的な雑誌をたまたま目にしてしまう

インターネット上でアダルトコンテンツを視聴してしまう

こうした、幼少期発達段階の不適切なタイミングで、性犯罪が関係するアダルトコンテンツを目にしてしまうことがあります。幼少期の脳に対して、性的な情報が脳に与える影響は深刻です。早すぎる性的早熟に加えて、性犯罪に関係するコンテンツで性的興奮を覚えてしまう思考回路が脳の中に出来上がってしまいます。ですが、当事者は当然ながら、こうした性犯罪の違法性を認識しています。ここで重要な意味を持ってくるのが、「背徳感」です。


「本当は悪いことなのに、興奮してしまう」という矛盾が、当事者の頭の中で起きてしまうのです。当事者の脳は混乱し、「こんなことしちゃいけないのはわかっている」と「性的に興奮する」を何度も行き来し、当事者は大変苦悩します。

もちろん、当事者は必ずしも行動に移すわけではありません。様々な理由で自分の理性を保とうとします。


「社会的地位を失ってしまうかもしれない。」

「家族に対して合わせる顔がない。」

「そんなことをして何になるんだ。」

「AVで我慢すればいいじゃないか。」


こうした自分自身に対するたくさんの言い訳を積み重ねても、自分の中の「背徳感」と「性的快感」の板挟みになり、苦悩に苦悩を重ねた結果、「性犯罪」が起きてしまうのです。


もちろん、すべての性犯罪者がこのようなプロセスをたどるわけではありません。

しかし、性犯罪者の中には、快楽に犯罪の背徳感が結びついてしまって苦しんでいる人たちがいるのも事実です。これは、快楽を感じたときに放出される脳内物質PEAを、犯罪の背徳感から出るドキドキ感、ドーパミンやアドレナリンが強化してしまうことによっておこると考えられています。


このように、性犯罪に手を染めるようになってしまった当事者の脳内では、性的快楽と犯罪の背徳感が結びつき、快楽を強化してしまっているのです。そして、より強い刺激を求めて犯罪を繰り返してしまいます。


厳罰化や社会的地位の剥奪より、被害者の心のケアを最優先に行うべき


以上のように、一度性犯罪に手を染めてしまうと、「またあの快感を味わいたい」という強い性的渇望(衝動)にかられてしまいます。こうなってくると、以前は犯罪の抑止力になっていた社会的地位や家族の存在や逮捕のリスクなどが、徐々に薄れていきます。

つまり、厳罰化したり、社会的地位を剥奪したとしても、性的快楽と背徳感が結びついている以上、性犯罪が止まることはないのです。

性犯罪の抑止としては脳のメカニズムを当事者が理解し、犯罪のトリガー(引き金)を引かないように日常的に訓練していく必要があります。様々な治療法がありますが、認知行動療法や条件反射制御法などで改善していくことができるというデータもあります。 また、厳罰化や社会的地位の剥奪は、被害者の深刻な心身の傷に対する賠償的な意味合いが大きいのでないかと感じています。 中には、性犯罪者にはGPSチップを埋め込むなどの取り組みなどもあったようですが、残念ながら再犯抑止にはつながっていません。 何よりも優先するべきことは、性犯罪への厳罰化や社会的地位の剥奪以上に 被害者が一刻も早く、心身のケアを受けられる環境の整備ではないかと私は考えています。 現在、性被害に遭った時に様々な対応が可能なワンストップ支援センターが設置されています。 https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/seibouryoku/consult.html


しかし、これでもまだ対応は不十分です。

長期的にカウンセリングなどを経済的負担が大きく、性被害者が気軽に利用できる状況とは程遠いと言わざるを得ません。

もし性被害に遭ったら、すぐにワンストップ支援センターへ連絡してください。 そこにはあなたの味方になってくれる人が必ずいるはずです。


私は痴漢被害から、性依存症が悪化した経験があります。 今でもたまに、顔の見えない犯人の手の感触の気持ち悪さを思い出して苦しくなります。


だからこそ、性犯罪を減らすには、正しい認識を広めることが重要だと思っています。被害者心理からすれば、厳罰化や社会的地位の剥奪で性犯罪者が表に出てこないでほしいという思いは痛いほど伝わります。


ですが、性犯罪というものが起きてしまう背景には、性犯罪者も、自分の行動をどうにもできない苦悩を抱えて、誰にも相談できずに苦しんでいることも、理解がひろまってほしいと思います。

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